殺す権利
愛知県弥富市で14の中学生が同級生を殺した。
ことの発端は巷でささやかれているような噂話から推測するにあたりいつまでもこの国のいじめ問題とは、その問題を棚上げした結果、もう待っていられず解決方法はいじめっ子を殺すに至る。いつまでも解決しない、じれったい、ならば殺してしまうほかない。大人たちが解決策を出さないからこうやって死人が出たのだと。
いじめられたことに対しての恨みがあったとある。いじめられたから仕返しで刃物で殺す。今までさんざんいじめられて自殺してきた中で今回唯一いじめられて自殺せずに逆にいじめた側を殺したこの点が今回の事件が今までと違うところ。ネットではそうした今まで泣き寝入りでいじめ加害者は裁かれもせずいじめ被害者は命を絶つという理不尽な道理に反した顛末があったからこそネット民はよくいじめっ子を殺したなとか因果応報とか当然の報いだとかそんなことを口走っていた。
とまあ、偉そうに語れるこんな事件に何のかかわりもないから好き勝手言える。人によってはこれこそがネットの醍醐味なのだろう。しかし私はこの事件本心ではバツが悪いしそもそもこの事件は子供が子供を殺すことに対するその経緯がそんな単にいじめであったと片づけていいのか。本当に人の魂を打ち砕かれたいじめだったのか? はっきり言うと14の子供が同年代を刺殺せしめるとは根本的な人間性に疑問を感じざるを得ない。そしてこの事件の加害者に同情するネットの声も自分たちの都合のいい憶測だけで話をすすめてしまっている気がする。果たして命を奪うほどの仕返しは妥当なのか? 私は今回のいじめの仕返し、本当に殺して償わせるほどの苛烈極まりないいじめを受けていたのだろうか。20㎝の刺身包丁みたいなのを購入し一人呼び出して腹部を十数回刺し肝臓を破壊しないと気が済まなかった強い殺意は、なんだろう、加害者の被害妄想が強く表れている気がする。かつて佐世保で小学女児がカッターで同級の首を落ちる寸前まで切りつけたことがあるが今回の事件にはそんな常人には計り知れないサイコパス性を感じるのだ。つまりいじめの仕返しというよりは精神病理的状況下にあり気分障害が著しく被害妄想を膨らませていた可能性がある。
根拠
・加害少年は「いじめられた」ではなく「嫌な思いを受けていた」と証言している(NHK報道)。ここをネットでは「いじめが原因」としているがミスリードである。嫌な思いとはどんなものなのか個々にその価値観は主観的であるがゆえ嫌な思い＝いじめと結びつけるのは早計。嫌な思いとは被害妄想が肥大化しすぎてないか? または死人に口なし。今の供述には他罰的で恣意的な感情が見え隠れしている気がする。
恨み募らせていた? いじめられていたと言わないで恨み? 恨みで人を殺すことは大体が逆恨みとゲスのかんぐりをしてしまう…。いじめられた趣旨の供述もあったりなにが本当なのかわからない。
・人を殺すのに適した20㎝刺身包丁をネットで買う計画性の高さはいじめで追い詰められたとは思えない冷静な行動で不気味。休み明けに機会を伺いことに及び躊躇なく腹を刺すことのできるのは大人でも気が狂っていないと出来ないほどだと思う。中学のうちから刃物で殺すという、その殺すという考えが実行されてしまうこと。引き返すことなく思いとどまることもせずいじめの仕返しにしては度が過ぎる。
・学生時代いじめを経験してきた人は多数いるだろう。いじめられた体験を語れる人はそのいじめっ子を殺そうとはしなかったのかと聞かれると殺したいと思ったということもある。ではなぜあの時実際に殺さなかったのか? 子供といえどもそうした境地には至らないケースがほとんどはあり本来子供とは人を殺せないようできているらしい(人を殺すという強い自我がまだ発達していないため行動にうつせないだけ)。それを出来るようにするのはヒトラーユーゲントなど強い洗脳的思考を植え付けるか生まれつき異常性を持った子供のみである。つまりいくらいじめられたとはいえいじめっ子を殺害してしまうのは一般的な子供というものの理解を超えている。
・少年犯罪は主にその少年の家庭環境が大体は関係してくる。犯罪心理に関する書籍では必ず語られているし、実際の少年犯罪を紐解けば偏にその家庭環境のマズさである。今回の事件はいじめは一つのきっかけである気がし、そうなると加害者の家庭環境の実態も調査し複合的に判断したほうが良い。そこから闇の深さが垣間見れると思うのだが…。いじめが人格を歪ませた? いや、育児が人を歪ませ家庭環境のマズさが学校環境に波及し級友のコミュニケーションに齟齬が生じ心的ストレスから精神的にナーバスになりすぎたために起きた犯行ではないかと私は踏んでるが?…。
別に殺したければ殺せばいい。ただ、いじめられっ子にはいじめっ子を殺す権利がある。そういうネットの考えに今回反発したくなった。いじめられてもいないのにいじめられたと言って殺人犯す人間を出さないためにもいかに同情の余地があろうと殺人は殺人であり殺人という意味をまず理解しなければいけないし同情を取り入れるほど日本の司法は甘くなってはいけないし常に法は非情でなければならない。嫌味を言うと何も知らないのに殺人を肯定している元いじめられっ子って情けなくないの? 自分がいじめられたからってそうやって昔に八つ当たりして今回の殺人を称賛するのって。だったらあの時いじめられたら殺しておけよと。人の事件を自分の都合のいいように解釈して気持ちよくなっているそんなヘタレな大人に加害者も褒められたくはないと思う。
